関係に悩むこと

 ナンパを始める前は人間関係に悩むことなんてあんまりなかった。家族関係にしても小中高の同級生にしても周りに合わせるばかりだったし、大学になってからは人間関係に悩もうにも人と関わる機会がほとんどなかった。ナンパを始めてから目の前の女性とセックスしたい、付き合いたいと主体的に働きかけるようになって人間関係に今更ながら怒涛の勢いで悩まされるようになった。きっかけは女性との人間関係が最初だったけれど、よくよく考えて見れば男との関係もうまく築けていないのだと気づいた。(思うような)人間関係を築けていなかった。関係性にこだわりすぎているのもあるかもしれないけれども。関係にどう悩んできたのか振り返ってみようと思う。

 去年の三月くらいからだろうか、少しづつナンパが上手くいくようになっていった。何人とセックスしたかは全然数えていないから全くわからないのだけれど、その人の顔だとか、性癖、その人に感じた恐怖だとかを媒介としておぼろげに覚えている。最初は達成感を感じてはいたと思う。その時期は僕はナンパしてセックスした女性とまた会いたいと思うことがほとんどなかった。その時期にセックスした女性は身近にいたら二人で飲みに行くのも嫌だと感じるような人ばかりだったからだ。そういう人にしか相手にされていなかった。

 無理やりテンションを上げてどうでも良いことをひたすら話して、どうでもよい相手の話を聞いてセックスする。これの繰り返しだった。全然満たされなかった。関係を築きたいとすら思わなかった。ナンパがうまくいけば自分の復讐心だとか悩んでいることが解決されて生きていけると思っていたけど、何も解決しないばかりか精神的に落ち込むことが多くなった。セックスも楽しくない。キスをして吐きそうになって口をゆすぎにいったら、洗面台の鏡に映る女の子の睨む顔を見てしまったこともある。あれ、なぜだろう。必死に考えた。相手がよくないからだ。ろくな人に相手にされない。いやいやきっと次こそ。あれ?。同じループの繰り返しだった。

 そこで何のためにナンパをしているのかもう一度考えなおしてみた。当初ナンパを始めたときはコミュニケーションがうまくなりたいだとか自分の復讐心を晴らしたいという気持ちだった。コミュニケーションが上手いこと、そして自分の漠とした復讐を晴らすことをナンパでセックスをたくさんすることに変換して理解していた。だからナンパがうまくなりさえすれば、この悩みは解消されると信じていた。けれど自分にとって無理なコミュニケーションは苦痛でしかないことに気がついたし、たまに打ちひしがれるけれども復讐心はどうでもよくなった。絶望した。目標を失ってどうすればいいかわからなくなってしまった。去年の11月くらいから、ちょうど忙しくなる時期と重なってナンパはしばらくしなかった。その間女性と関わることがなくなって、自分の思っていることを話したいなと思ったけれど相談できる仲の良い人がいないことに気がついた。関係を築けていなかったのは女性だけではなかった。

 今年の2月くらいからまたナンパを再開した。テーマはちゃんと関係を築くこと。ナンパでよく使っていた安い居酒屋じゃなくて、ちゃんとした美味しいお店に連れて行ってみたり、セックスを志向しないようなプロセスを踏んでみたりした。フラレたりフッたり、色んなことがあった。なんとなく関係してる感は感じてきた。今度は関係を深められないことに悩むようになった。そんな話をとあるナンパ師にしてみた。詳細は割愛するけど、彼と彼の友達と一緒にそういうことについて話したりしているうちに自分にとっては唯一の良い関係が築けた。ナンパの話もするけど、お互いナンパ師として接していない時のほうが居心地が良い。彼との関係で指針が見えてきた。今はそんな感じ。